税理士報酬は、月額顧問料や決算料など、年間にすると数十万円もかかるものです。
売上から支払う大切なお金ですから、あらかじめ相場を押さえておいた上で、適正な税理士報酬を見極めるポイントを知ることが大切です。
ここでは税理士報酬を見極めるポイントや税理士報酬がどのような考えで成り立っているのかをご説明します。
ぜひ参考にしてください。
1. 税理士報酬の相場
日本税理士連合会の第5回税理士実態調査報告書によると、法人の場合、もっとも多かった月額顧問料は「3万円以下」、決算料は「20万円以下」、個人の場合もっとも多かった月額顧問料は「3万円以下」、決算料は「5万円以下」でした。
※顧問料・決算料に加えて、別途で年末調整、消費税申告、法定調書、償却資産申告書などが必要になる場合があります。
平成14年以前の税理士報酬は、年間の取引高によって、法人税ですと2000万円未満なら2万円、1億なら7万円超などと、税理士法によってきめられていました。
今でも古くからの税理士ですと、この名残で税理士報酬を設定したままのところも数多くあります。
しかし、平成14年の税理士法改正により、今は税理士報酬の額は自由化され、基準がないのが現状です。
ではどのようにして適正な税理士報酬を見極めたら良いのかは次でお話しします。
2. 適正な税理士報酬を見極めるポイント5つ
適正な税理士報酬を見極めるポイントは5つあります。
税理士報酬は低い金額が「安かろう、悪かろう」とは限りません。
そして高い金額であっても、満足度が必ず伴うわけでもないのが難しいところです。
家電でも、安い割に重宝するものもあれば、高い割に使わない機能がたくさんあって宝の持ち腐れになることもあると思います。
しかし、ポイント5点をしっかり押さえると、適正な税理士報酬がわかるようになると思います。
適正な税理士報酬を見極めるポイント5つ
- 顧問税理士にどのようなことを望んでいるのか
- 上記を聞いた上で顧問税理士がどのようなサービスを提案してくれるか
- 顧問契約の中には何が含まれるのか
- 報酬に不明点はないか
- 契約書の取り交わしがあるか
以下、順番に説明していきます。
2-1. 顧問税理士にどのようなことを望んでいるのか
まず一点目は自分が顧問税理士に対してどのようなサービスを望んでいるか、という点です。
家電で考えてみましょう。
家電を買うとき「この機能は欲しいけど、この機能は特にいらない」といった要望があるでしょう。
税理士に対しても「領収書整理から全部丸投げしたい」や「記帳は自分でするからとにかく安くして欲しい」といった要望があると思います。
まずは自分が税理士に対してどのようなサービスを望んでいるのか、というのをあらかじめ書き出しておくことが大切です。
2-2.上記を聞いた上で顧問税理士がどのようなサービスを提案してくれるか
要望を聞いた上で税理士がどんなサービスを提案してくれるのかも重要です。
家電を買う時も、スタッフに要望を伝えると「それでしたらこちらの商品の方がオススメです」と自分が思ってたものと違う家電を勧められることもあるでしょう。
良い税理士というのは、要望に100%答えてくれる税理士ではなく、「本当にその人に必要なサービスを提案し、提供してくれる税理士」であると思います。
もし勧められた家電が予算より少々オーバーしていても、あなたのニーズを満たしてくれるものであれば満足して買うことでしょう。
税理士報酬も同じと言えます。
安く抑えたいのはわかりますが、1番大切なのは、安さよりも今のあなたに1番必要なサービスを提案、提供してくれる税理士を探すことです。
2-3. 顧問契約の中には何が含まれるのか
顧問契約の中には何が含まれるのかも確認しましょう。
顧問税理士にお願いできる仕事内容はたくさんありますが、顧問契約内でどこまでの業務を行ってくれるかはその契約によって違います。
例えば、月々の顧問契約料が安い場合には、訪問回数が少なくなるのは当たり前ですし、別途仕事をお願いすれば、日当という形で追加料金を請求されることもあるでしょう。
自分の顧問契約の中には何が含まれているのか、しっかり確認しましょう。
2-4. 報酬に不明点はないか
税理士報酬に不満がないか、不明点がないかも確認する必要があります。
例えば、税理士報酬が月額5万円である場合、それを高いとみるか、適正とみるかは見方によって全く違います。
売上高が5億あって、毎月訪問していて、従業員50名分の給与計算もお願いしていて・・・といった場合には破格に安いと言えますし、全く来ないし、相談もできないし、ただ淡々と作業をしているだけ・・といった場合には少々高いと感じるかもしれません。
何をもって月額顧問料が設定されるのかは、このあとご説明しますので、よく押さえておいてください。
ただ税理士に言われるがままに税理士報酬を支払っているのでは不満がたまる一方でしょう。
そうならないためにも、報酬に不満がないかを確認する必要があります。
2-5.契約書の取り交わしがあるか
古くからの税理士の中には、口約束で顧問料や業務内容に関する契約書の取り交わしがないかたもいらっしゃいます。
しかし、お互いにトラブルをなくすためにも、契約書の取り交わしはしっかり行いましょう。
3. 税理士報酬の根拠3つ
税理士報酬の根拠となるものには主に以下の3つがあります。
税理士報酬の根拠3つ
- 売上高と訪問回数による報酬基準
- 取引量・作業量による報酬基準
- 難易度加算
基本的には税理士報酬とは、固定額・従量額・難易度加算のミックスであることが一般的です。
3-1. 売上高と訪問回数による報酬基準
1番の基準になるものは、売上高と訪問回数による報酬基準です。
例えば、年間売上高3000万円、訪問回数年12回であれば月額3万円、年間の顧問料は36万円などといった感じです。
(税理士法人スーゴルの顧問料例です。これに別途、年末調整料、決算料、消費税申告料などかかります)
売上高と訪問回数をもとに、報酬金額を固定しておく契約形態です。
ただし、これはあくまで基準となる税理士報酬であり、全ての業種にも当てはまるわけではありません。
同じ売上3000万円であっても、全く仕入れのない取引の簡単なコンサルタント業と、複雑な海外取引のある小売業、現金商売である飲食業など様々にケースが違います。
この場合はある程度仕事内容による業務量を加味して税理士報酬が決められます。
3-2. 作業量による報酬基準
作業量に応じて報酬金額が変動する方式です。
例えば従業員の人数によって作業量が異なる年末調整業務については、従業員5名以上は一人につき3000円プラスなどといった感じです。
また記帳代行(会計ソフトへの入力)なども、100仕訳が5,000円、200仕訳が10,000円といった感じで作業量に応じて月額顧問料とは別にかかります。
また、税務調査立会報酬は別途日当になりますし、社労士業務(給与計算や社員の入退社届出など)についても、月額顧問料には含まれず、作業量による報酬基準となる場合が多いです。
3-3. 難易度加算
難易度加算とは、特別な状況下において基本報酬に加えて別途加算される報酬のことです。
例えば、期限間近で処理日数を確保できない場合(一括決算)や、特別な業種(医業・不動産・中古車販売など)の場合に、特別な調査を必要としたり、外部専門家の協力を要する場合などが考えられます。
こうした場合は、お客様の了解を得た上で難易度加算が設けられる場合があります。
4. 税理士との顧問契約の必要性
そもそも税理士の仕事とは、税金に関して税務代理、税務書類の作成、税務相談の事務を行うことが一般的な仕事です。
法上の「税務代理」には、納税者に代わって、申告等の法律行為をする代理だけではなく、税務当局との間で行う事実認定、法解釈等についての事実行為の代行も含まれています。
最近では会計ソフトが進歩し、自分で記帳もできるし決算書も作れる、税理士に払う税理士報酬が馬鹿らしいと考えている人が増えているように思います。
しかし、会計ソフトは税務判断はしてくれません。
税務調査で税務的なことを聞かれたときに、会計ソフトは答えてくれるでしょうか。
税理士の年間の業務時間には、税務やそれに付随する研修・調査・勉強に要する時間が含まれていることも知っておく必要があるでしょう。
また、最近の税理士には経営コンサルタントの一面を持った税理士も増えてきています。
金融機関からの融資相談、補助金・助成金、資金繰り相談、生命保険の活用、従業員に関する相談、経営計画、事業計画など多岐に渡ります。
まずはあなたの税理士がどんなことをしてくれるのか、1度相談してみるといいでしょう。
まだ税理士を検討段階の人は、値段だけにとらわれずに、この税理士はどんなサービスを提案・提供してくれるのかを見比べるといいでしょう。
最後に
税理士報酬にあたっては、報酬の基準と、算定方法を合理的に説明できるものでなくてはならないと思います。
それらがあいまいなもの、納得いかないものとは契約すべきではないでしょう。
税理士を変えることは意外に簡単にできますが、会社や個人の内部状況まで知られてしまう税理士は慎重に選びたいものですね。
また、「【2022年11月更新】義務化された電子帳簿保存法について税理士法人が解説」の記事で、電子帳簿保存法について解説しています。あわせてお読みください。